公開: 2019年8月2日
更新: 2019年8月xx日
動物の社会においても、仲間同士で戦うことはあります。狼、ライオン、猿などの動物の群れでも、食物や2頭のオスが1頭の雌を争う例は珍しいことではありません。普通、動物の社会では群れの中での序列が決まっているので、序列の下位のものが、上位のものに戦いを挑むことはありません。それでも、上位のものが歳を取って弱ったり、怪我をして弱った場合など、下位のものが上位のものに挑むことがあります。特にライオンの群れや、猿の群れでは、ときどきそのような戦いが起こることがあります。しかし、戦いが始まって、どちらかが優勢になると、劣勢になった方は、すぐに自分の負けを認めて、相手の勝ちを認める態度をとります。この「しぐさ」がきっかけとなって、戦いは終わり、勝った方は、勝ったことを示すポーズをとります。ですから、戦いの相手を殺すことはほとんどないそうです。しかし、人に近いチンパンジーでは、時として戦っている2頭の間で、興奮状態が続くと、優勢なチンパンジーが劣勢な方を殺してしまうことがあると報告されています。この行動は、チンパンジーのオスに特有なものだと言われています。それは、攻撃的な性質を作り出す、テストステロンと言うホルモンの分泌量が多いためだと分析されています。人間の祖先も、チンパンジーから分かれて進化したと考えられていて、約7万年前ごろまでは、テストステロンの分泌が多く、殺し合っていたと考えられています。しかし、インドネシアの火山の大噴火で地球が寒冷化したとき、崖にできた洞窟に逃げ込んだ人類の祖先は、お互いに助け合わなければ生きてゆくことが難しかったため、攻撃性の強い人々が群れから排除され、攻撃性の低い人々の遺伝子だけが残ったと考えられています。人類は、その時に生き残ったたった1万人の祖先の遺伝子を引き継いでいるため、ほかの動物よりも遺伝子の違いが極端に少ないそうです。
ユヴァル・ノア・ハラリ、「サピエンス全史(上・下)」(2016年)、河出書房新社